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小鳥の鳴く昼下がり

2024-10-24

シナリオ:お嬢様の秘密は甘美

セットアップ

ジェイ・ハルカナ・(苗字) #ジェイとイフェン
🎲1d6 → 6
性格:負けず嫌い 頑固か……
🎲1d6 → 4
家族:末っ子
🎲1d6 → 1
特技:お勉強

優しい兄たちの元で、甘やかされて育った頑固な負けず嫌い。
正しい知識欲があるから落ちこぼれではなかったが(少なくとも兄の誰かよりは)、それにより吸収された知識と未知への探求心は、やがて世界を知る旅に自分を差し向けることになる。

お友達のお嬢様
🎲1d25 → 5
名前:E!エリン!
🎲1d6 → 2
性格:活発
🎲1d6 → 3
ご家族:中間子 
🎲1d6 → 6
特技:スピーチ・交渉

エリン。裕福な繋がりのうちで、最もジェイと年の近いお友達。

勉学だけそつなくこなすジェイと違って、彼女は乗馬や狩猟などの娯楽を好み、日々腕を磨いていた。口も達者なもので、幼いながら大人顔負けの堂々とした振舞いは、なかなかのガキ大将気質だ。
彼女の兄弟は上ばかりで、妹のみがいなかったから、一つか二つだけ年下のジェイはよく可愛がられた。ジェイは彼女に対し、ほんの少しの畏怖と憧れ、それから大きな尊敬を抱いていた。

お茶会にて

お茶の用意

🎲1d6 → 6
語る秘密の数:6!たくさん!
お茶表!
🎲1d6 → 4
種類:ディンブラ
🎲1d6 → 1
お砂糖:ひとつ
🎲1d6 → 5
プラス:ハーブ
フルーティーで甘い香り。下に甘みをもたらすが、後味はすっきりと抜けていく。

今日は私のお屋敷でお茶会。
実を言えば、エリンの親が私の親への用事を持ってきただけで、彼女はただ帰りの間まで預けられているだけなのだけど。それでも私たちだけのお話の機会には違いない。

ひとつめの秘密

🃏 → 8🍀
お菓子表:タルトタタン ネガティブな傾向、都合の良い人物

いつも見かける神官様から洗礼式を受けることが、私の役割なのだ。そう気付いたのは最近だった。
私の持った、本当に私を見ていてくれるお方の話を、神官様に諭されたのが最初の気付きだった。私たちにとっては、既に尊い御方がおられるというのだ。私の持つそれは、今の私にとって確かに導きの存在かもしれないが、唯一無二ではなく、苦しみの渦中までも見守ってくださるわけではないという。
なるほど、お屋敷は自由で優しくて満たされているから、私は苦しんだことがない。……でも、本当に?

ふたつめの秘密(エリン)

🃏 → Joker!

つい口を出たはしたない愚痴に恥じらっていると、エリンはけろりと笑った。悩まずとも、私の信じたいものを信じればいいと言う。
彼女の信ずるものを尋ねると、内緒、エリンはそう言って笑った。人差し指を立てて笑う顔は、私よりも子どもっぽい。無邪気なエリンは、代わりにと言って打ち明けてきた。

みっつめの秘密(エリン)

🃏 → 2🔶
お菓子表:カップケーキ ポジティブな、今日行った小さな親切

エリンは今日、道端の乞食に金貨を与えてきたというのだ。
まあどうして、なぜ? 紅茶をこぼしそうになりながら聞き返す。乞食への恵みは、私たちの宗教においては――私が信仰しきれないほうの宗派においては――最上の善行とされている。彼女はよいことをしたのだ。でも、私たちの持つ金銭は家長であるお父様に与えられたものであって、まだ私たちの所有物ではない。それは、悪いことだ。

「人を救いたいの」彼女は言った。「そのために自分が罪と罰を与えられようとも構わない。わたくしは運動が得意だから、きっとどんな雨が降ろうともその中を駆け抜けてやるわ。だから平気なの」
はっきりとした意志の込められた声だった。
それから付け足すように、これも内緒よ、と言って笑った。

よっつめの秘密

🃏 → 4🍀
お菓子表:ザッハトルテ ネガティブな傾向、今邪魔に思っている物事

彼女は強い。

私は彼女のようになれるだろうか? ――彼女のことをちょっとだけ眩しく感じるのが、その答えだ。勉強は楽しいけれど、私の裕福な人生を捧げるのはそれじゃない。本を読むのは好きだけれど、紙はいつも茶色く、文字はいつも黒いから地味で退屈なのだ。私が信仰を捧げるのは、心からの信仰を捧げるのは、きっとあの御方ではない。

お勉強というのは、それを見定めるためにあるのよ、と彼女は続けて言った。だから迷ってもいいのだ、と。少なくとも、私たちはそれができる環境にある。
「一度信じることがだめだったのならば、次を信じてみればいいのよ」――彼女が小さな甘い欠片を口に運ぶ。ケーキに取って代わられた何気ない一言は、数年後の私を屋敷から旅立たせることになった。

いつつめの秘密(エリン)

🃏 → 3🍀
お菓子表:ブラウニー ネガティブなコンプレックスについて

エリンはいつもおいしそうにものを食べるけれど、今日の減りはなんだか控えめだった。気に召さなかったかと尋ねれば、慌てて首を横に振って、顔を寄せてささやいた。
「成人礼までに狩猟はやめることって、お父様に命じられてしまったわ。わたくしは女だもの」
お兄様とわたくしは違うのね、と、ため息をついて紅茶を傾ける。エリンの狩猟の腕は私から見ても確かだ。弓を持たせれば、すっごく遠くにいる鹿も一発で仕留めてしまうのだ。もったいない、本当にやめてしまわれるの、と尋ねたら、彼女はちょっと悩んだ末に、また首を横に振った。きっと怒られてでも続けてしまう、とまた笑って、大きな口にチョコレートをおさめた。わたくしにとっての信仰のあり方だから、と。

私は天職という言葉をまだ知らなかったから、何も言えなかった。気の利くことは何も言えないけれど、ひとつだけ確かなことがあった。私は、彼女のそういうところが好きなのだ。

むっつめの秘密

🃏 → 13♠
お菓子表:デビルズケーキ ネガティブな人の死に関すること

続いて彼女は、とんでもないことを言った。成人礼の前の日に、落馬して死んでしまおうかしら?
私は思わず立ち上がって、テーブルの上の食器を耳障りに揺らしてしまった。慌てて飛んでくる侍女をなだめて、庭園の隅に戻らせる。
エリンはちょっとびっくりして、それから声を上げて笑った。私もそういう気分なのではないか、と。

言われてみればそうだ。心を委ねられない信仰を持ち続けることは、私にとっては――あるいは、他の誰にとっても――際限のない苦しみだ。曇りない意思を捧げることができないままで洗礼式を迎えるくらいなら、その前に死んでしまうほうがいいのかもしれない。……そうしたら、この紅茶も飲むことができなくなってしまうけど。

それから

私とエリンは、声を潜めて一つの約束をした。老婆の歳になるまで、何か一つだけ、本当に信じたいものを信じること。それは途中で変えてもいいけれど、どうあれ自分の心に従うこと。そうできなかった時は、互いに知らせを書いて、一番大事なものを離さず抱えて、天上に旅立つこと。
その約束は、甘くて重たく、後味はほんのりと苦い。少女らしい空想の行き着くの先ようだけど、私は本気だった。そしておそらく、彼女にとっても。

エリンの迎えが来ると、私たちは何食わぬ顔で別れの挨拶をした。侍女は何も言わず、エリンのお父様も何も言わない――否、私たちだけの約束を知るわけもない。慣れた挨拶の言葉は、どことなく秘密の響きを帯びていた。