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燃える花畑

2024-11-14

シナリオ:嗚呼、この村は…。

キャラクター

🃏 → 🧡ハートの 3
女、まだ成人もしないくらいに若い
🔮<棒♣️ 女王 > 田舎の女性/親しみやすく貞淑/尊敬できる
名はカリナ

村を焼く

🎲1d6 → 3
焼く村は:花咲く穏やかな村
🎲1d6 → 1
同行者:カリナ一人だけ
🎲1d6 → 4
村を焼く理由:誰かの願いを叶えるため

その村は、美しい村だった。
広い森に囲まれ、周囲にはのどかで分厚い花畑が広がっている。立地のせいで少し田舎だけれど、それだからこそ平和とも言えた。人口はほどほど、流通もほどほど。たまに不便はするけれど、大して貧乏でもない、恵まれた村。
花畑から見上げる晴れの日の青空、家に駆けこむときの雨の日の重たい灰色、寝室から覗く嵐の夜の真暗闇……どれも、そう特別な風景ではなかったけれど、私にとってはかけがえのないものだった。どれも、彼がいたから。

彼は、体が弱かった。あの村を出たがっていたけど、ついぞそれは叶わなかった。長旅やそれに伴う辛苦に耐えうる体ではなく、そういう万一を乗り越えるための支度も、まずあの田舎では叶わなかった。故郷であるあの村のこじんまりとした美しさを、彼は――彼なりに――愛していたけど、一方であののどかさは一種の牢でもあった。病床の彼は、繰り返し私に告げた。自分をいつか、ここでないどこかに連れ出してほしい。
この村の一部になりたくない、と。
やせ細った体は、花畑の土の下に埋められた。慣例だ。ここは、そういう村なのだ。人という栄養を得た花は赤みを帯びて、年中満開に咲き誇る。

🎲1d6 → 1
村焼き道具:松明と燃料
🎲1d6 → 1
村焼き:焼き尽くした

花弁を踏みながら花畑に踏み入り、真ん中を陣取る。ここは村の全体図で言えば外周の一部で、街道からは最も遠い角。歩きながら散らしてきた火油の火元がここならば、逃げ道を失う人は少なくて済むだろう。そして……彼の埋まった区画でもある。
花を踏むと死者を冒涜した罪を負うだとか、いずれ自分が埋められた時に雨で流されてしまうだとか。この村では様々に言われるけれど、構いやしない。どうせ今から、それ以上の罪を伴う行為をするのだ。

明かり代わりに持っていた炎を、落とす。
――夜を選んで正解だった。地表を舐めるように燃え広がった炎は、花弁をもまき散らして燃える。燃える。風もないのに花弁は舞う。地面から立ち上がる火の粉はだんだんと数を増し、やがて村にまで届く。
悲鳴が方々から上がり出すのも、時間の問題だった。水を運んでくる男、怯えて逃げていく女。私はそれらが行きかう様子を、炎の最中で朝まで見ていた。

それから

焼け落ちた畑を掘り返すうちに、だんだんと腕や腰が痛み始める。しかし、作業は思いのほか軽く、そして早く済んだ。表面的で脆い枯葉のような手触りの奥に、ふと引っ掛かるものを感じる。
彼の手だ。嬉しくて、思わずしゃがみこんで手を取る。彼の手、ああ、彼だ!
もう、あなたはここに縛られなくて良い。あなたに根を張るものはない。これからは、どこへだって行けるのだ。私と一緒に、旅に出よう。赤い花のない土地へ。遠く、遠く、風みたいに駆けてゆこう。