ある まちに、ある かぞくが すんでいました。
そこの きょうだいは たまに けんかを しながらも、
にこにこ なかよく しあわせに すごして いました。
いちばん したの しょうねんは、このまま ずっと みんなと いっしょに い
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町が見えなくなってから既にしばらく経っている。
それでも、慣れ親しんだ場所がある方角からなかなか目を離せなかった。
生まれ故郷を離れて旅に出る。初めて、それも一人で。
一抹の不安や寂しさは確かに心の内にある。
とはいえ、それだけではなかった。
この先、あらゆるものが待ち受けているのだ。困難? それよりも。
見知らぬ土地、景色、文化、人々、魔物、自分だけの冒険譚!
……浮き足立つ心と体を、腹の底から笑い出したくなる気持ちを、
馬車に備え付けの粗末なベッドになんとか沈み込ませた。
休んでおかねばならない。未知のこれからに備えて、一眠りしよう。